オリンピックの身代金(角川書店、奥田英朗)

店を片付けなさいとあちこちから言われてるのにちょい、休憩とばかりに夢中で読んでたのがコレ。いやぁ、奥田英朗だから全然期待してなかったんだけど、面白いわ、これ。今年のベストにいれてあげよう(えらそうに)
前に読んだのがちょっとはずれだったんでスルーしてた作家なんだけど、これはビンゴでした。というわけで、一作くらいはずれでも諦めたらあかんてことですな。
2020年に東京でオリンピックをやろうとメディアは騒いでいる。
私はやるんなら、福島や宮城だろうという思いをどうしても捨てきることができない。
この本は五輪関係の本と並べても面白いし、昭和を感じさせる「三丁目の夕日」みたいな本と並べても面白い。
ハードカバーでしかも上下2段組だから、抵抗あるかもしれないけど、クーラーきかせて読めば暑さ忘れます。文庫だと上下2冊でっせ。
時代は昭和39年、五輪開催へまっしぐらの東京。
東大出で父は警察官僚の須賀忠はなぜかテレビ局に就職。この頃もこんな言葉を使ってたとは(ほんとかね)。渋谷で寿司をプーヤでシース。もうこの1行だけで絶句するね、あたしゃ。このひっくりかえす言葉がどうも好きになれん。こいつが最初にでてきたので、主役かと思いきや、主役の同期なんだな。須賀が花火大会に行く途中で出会った東大院生のSが主役。秋田の熊沢村出身で、村の期待を背負っていた。
こいつの思考回路というか、行動がテロリストなんだけど、ひきつけられてしまうのだ。犯罪に良いも悪いもないのだが。兄は工事現場で働く土方だが、ある日、死んだと知らせがくる。そして、彼は何を思ったか、同じ飯場で働くことに。この飯場が、ひどい労働環境なのだ。オリンピックはこの人たちの犠牲なくして建物ひとつ、建設できなかったのだ。まさに人柱である。末端を切り捨てて、繁栄の道へと突き進む国に、オリンピックを人質にしようとSは決意する。さぁ、この男、何をどこにしかけるのか。一方、警察側は公安対刑事というどうしようもない対立構造を起こし、犯人を幾度も取り逃がし、読むものを楽しませている(笑)
ただのサスペンス小説ではないとこがいい。
オリンピックの身代金