遅読のすすめ


荒川洋治「読むので思う」と並べて今年の1、2位は現在、これなのだ。作者の山村修氏は日刊ゲンダイで狐というペンネームで長いこと書評を書かれてきた方である。
この本で作者はゆっくり読もう、じっくりと読もうと提唱し、速読なんかしても意味があるかいと疑問を投げている。目から鱗が落ちることばかりである、この人の本は。本を読んでちゃんと消化し、己の血となり実としたい。切実に思う。だから私もこれからはもっとじっくりゆっくり一冊を読もうと思う。付箋をはりまくって、時には書き込みしたり、手帳に気に入った言葉を書き写しながら、己の栄養分となるように丁寧に読もう。
どうしたって世の中の全ての本を読むなんて不可能だし、タイトルだけを知ることさえ難しいのだから。
この本でも私はいろんな人を教えてもらった。狐の書評で取り上げた本でさえ読めていないんだけど、この本に載ってる人たちの本を探して読まずにはいられない。特にエミール・ファゲの「読書術」や遠藤隆吉の「読書法」や倉田卓次の「続 裁判官の書斎」
食事だって百回かめというではないか。私は早食いでよく友人に呆れられ、これは直したいとは思っているのだが。
100頁あたりに登場する杉浦明平立原道造のあんこをめぐるエピソードもめちゃ面白い。勿論私はあんこ嫌いの杉浦派である。詩人として道造さんは大好きですけどね(笑)精魂込めて書かれたであろう1冊1冊の本を自分も気合い入れて楽しくかつじっくり味わわないと失礼ではないか。
この人の本がなぜもっとないのだろう。1冊読み終える度に思ってしまう。
いやいや、何度でもこの人の本を読み返せばいいのだ。うん、そうだ。