花のれん

山崎豊子新潮文庫。これ、業種問わず、女性店主必読本(笑)たくましいし、商売上手やし、見習わないといかんとこが、山ほどある。地味ぃな表紙からは想像つかへんかったが、こんなに面白いとは・・・。
1958年、直木賞受賞作。作者といえば「大地の子」やら「白い巨塔」やら有名作多いけど、これ、読んだら、これも代表作にせんとあかん。
これ、吉本興業の創業者夫婦がモデルなのだ。物語は日露戦争から6年後の節季を迎えた船場。え?節季・・・聞きなれない言葉やなあ。年末とか、掛け売買の決算期という意味だが、ひとつくらいわからんでも、読み進むうちになんとなく分るからええねん。
主役の名は多加。夫は吉三郎。呉服屋を営む夫婦だ。大阪では商家の若奥さんを御寮人と呼ぶことがある。大阪弁というだけで、テンションあがる人は、これ、買いましょう(笑)
しかし、この船場の取引ってすごいなあ。契約書とかなしで、口だけのまさに相手を信用しないと成立しない取引で、節季の支払いを信じているからこそできるものなのだ。
夫は真面目に商売するどころか、芸人や寄席にうつつをぬかす毎日。そこで、多加は「そんなに寄席が好きならあんた、やりなはれ」
と助言し、この夫婦は寄席を運営することに。まずは寄席のはこものから探す。明治44年に天満亭で寄席をあける。旦那は真面目に仕事はやるが、金銭面に関しては細かいことを考えないタイプ。で、多加は任せておけず、奔走する。小銭貸しの石川きんという変わり者だけど有名なおばあさんがいる。利子は安いが偏屈者なのだ。このおばあさんは朝風呂に通うと知るや、自分も通い、お金を貸してほしいなんておくびにもださずに、せっせと同じ時間に通って仲良くなる。ビッグな芸人を呼べない多加たちは、地道に冷やし飴を売ったりして頑張るのだ。そんな多加が正月には大物をよびたいと、あのおばあさんに大金を貸してくれと勝負に出る。ここぞと思ったら、思いっきり勝負に出る多加はまさに商売人だ。
そんなある日、とうとうやっちまったよ、この旦那。芸者の家で同衾中に還らぬ人に。多加は葬式で城の喪服をまとう。これは亡き母が船場に嫁ぐ時はこれだけはもたしてやれと残してくれたもの。船場の商家で夫に先立たれ、一生二夫にまみえぬ御寮人は白い喪服を着て心の証をたてるしきたりがあるらしい。
多加は何故、白い喪服にしたのだろう。こんないい加減で浮気するような亭主だったのに。
そんな多加に一人の男が現れる。いつも寄席を聴きに来る市会議員の伊藤友衛。お互いにひかれつつも、一方が求めた時には、一方はひいてしまう二人。多加は商売をとり、伊藤は選挙違反で捕まった後、自殺をしてしまう。男の弱さがあぶりだされ、余計に多加の強さが浮かび上がってしまう。
多加は安来節を取り入れる。出雲へ行き、スカウトするのだが、そこでのエピソードがまた面白い。安来駅前で5銭のラムネを5円で買い、釣りはいりまへんと言う。小さい町で話題になるのを計算してるのだ。
関東大震災のおりには毛布と米俵を持って、東京へすぐさま飛び、師匠たちの安否を確かめたりと、行動力抜群の商売人である。
通天閣の両脇の店がほしかっただけなのに、値切りに値切って、通天閣まで買い取るからすごいわ。
吉本興業や落語にちょっと興味がでてくる本。

明日は外市仕入れに行くので、開店時間が遅れるかもしれません。ご了承下さい。明日も缶ビール激安にします(笑)