三人の女ひと

講談社文芸文庫、室生朝子「晩年の父犀星」に所収。
これ、そうなのだ。ぴっぽさんがポエカフェの飲み会で暴露したあのネタなのだ。
毎年夏は軽井沢で暮らす犀星に朝子が「ボーイフレンドでも作ろうかしら」というと「わしのほかに男の友達など必要ないぞ」と。えー、もしもし、どの口がおっしゃるんでしょう!
冗談じゃないぞと朝子じゃなくとも言いたいわ。(でもこの時点では朝子は気付いてない)
デパートの売り子だった小山万里江が住み込みの秘書として室生家にやってくるようになる。犀星とは孫といってもいいくらい年齢差がある子だ。
そして、万理江だけじゃなーーいとは!主治医から最悪の結果を告知された翌日、家政婦は知っているとでもいうような爆弾発言が朝子を襲う。
出入りのある畳屋がとあるアパートの階段を上がっていく犀星に声をかける。でもそれは声をかけてはいけない場面だったのだ。そんなの知らんわな、畳屋さんも。
即座に口止めする犀星。もうばりばり怪しいでんがな、決定的でんがな!
犀星はだいぶ前に冗談で「白皙の青年が息子ですって現れたら君はどうするか」なんて朝子にほのめかしている。わたしゃ、この本で白皙の青年なんて言葉を初めて目にした。
朝子は証言する(笑)父の一日は時間と一緒に動くほどはっきりしていたと。曖昧な時は1分たりともないと。1分もないってすごいよなあ。
離婚後、父といつも一緒に出かけていた朝子。いつしか映画だけは一人で観に行くことにした犀星。もう疑うべきはここしかない!
彼女も大事にし、家族にもみじんとも気付かれぬほど、気を遣っていた犀星だからこそできたタイムスケジュールなのだ。
「群像」から最近観た面白かった映画についての随筆依頼があったらしいが、勿論、書けませんよね、犀星殿。しかし、たまには彼女と映画を観なかったのだろうか。
誰に見つかるか分からないから、外出さえも控えていたのだろうか。でもこの女性(峯子)は先生と出かける時に貰った指輪をしていたというしなあ。
これだけ完璧に気付かせなかった父、犀星。峯子に時には嫉妬の念を抱くもすぐに後悔したりと朝子は淡々と述べている。本当のところは内心、穏やかじゃなかったかもしれないが
かなり客観的に己と父の関係を見つめている。
画像はもう何回行ったであろう、行きつけの広島流つけ麺のお店「とんがらし」
西池袋3−27−8.トッピングのチャーシューが旨い。つけ麺の辛さは選べるのでご安心を。