「動機」横山秀夫


面白い短編集に巡り会えました。大体、短編集って一つ、まぁ、最初のがよくてあとは・・・なんてのが多いんだけど、これはね、いいのが多いという秀逸作品集。タイトルがストレートで意味深にまずずしりと響いてくる。
帯にこのミス第2位とか日本推理作家協会賞受賞とか書いてあるのも読み出す前はふぅんと素通りしてたが、読了後、うんうん納得とこの変わり身の早さ(笑)
4つの作品で構成。先頭バッターは表題作「動機」
44歳の警視貝瀬が警察手帳を一括保管しようと提案したのが先月。この新制度が導入された翌月に、U署で30冊もの警察手帳が盗難に遭う。もうこの始まりだけでもどえらいこっちゃーとわくわくするでしょ。現実だとこんなわくわくなんて不謹慎やけどね、本やからね、どきどきしながら期待して読むべし(笑)外部犯か、内部反抗なのか。そしてこんな不祥事、隠し通せるはずもなくマスコミへの対応も迫られ、時間もない。無理矢理に犯人を想定し、体当たりしていく中で、貝瀬がたどり着いた答えとはいかに。ヒントをくれたのは妻との会話にでてきた床に絵の具をこぼしたという雑談であった。このへんのヒントの与え方もいい。
一番がイチロー級の打者の後では、さぞかし重圧だろうねと勝手に思いながら2番目の「逆転の夏」へと進む。
これを読みながらゆかり文庫にお嫁にやった吉村昭「仮釈放」を思い出す。おお、二番目も面白いやんけとぐいぐい読み進む。殺人依頼を見も知らぬ他人から電話でうけた山本。こいつはこのとんでもない依頼を受けてしまうんだろうかと思いながら、最後はうぉっ、そう来たかというような展開でこれまた驚かされてしまう。
この4つの中でちょっと落ちるなと思ったのが次の「ネタ元」なのだが、ま、ちょっと骨休みしながら読めばさくっと読めます。
最後を飾るのが裁判官のお話。あろうことか、裁判中に居眠りして妻の名前をうわごとで呼んでしまった裁判官のお話。これがただの居眠り注意、マスコミが騒ぎたててというようなオチには勿論ならない。
この男にも男の妻にもとんでもない物語がひそんでいたのである。それでも最後は切なさを感じてしまう。
明日23日は休み、24日は戻り次第、夜だけの営業予定です。