嵐吹く時も


三浦綾子新潮文庫、上下巻。
こういう小説って、本好きとかそういうの関係なく、本を嫌いな人にも読んでほしい。テレビドラマ見る人なら、この三浦綾子の描く人間ドラマにもすっと入っていけると思うのだ。
作者の祖父母をモデルに描かれている。二つの家族の物語なのだが、波乱ばかりで目が離せない。そして時折、胸にずきんと刺さる言葉が目に飛び込んでくるのだ。
舞台は北海道、苫幌。食料品から衣料品まで日用荒物雑貨を扱う「カネナカ」ここの主人、順平の「たとえ買い物をしない子供でも、楽しませてやりなさい。その日は客でなくてもいつかは客になる」いい言葉だなあ。なかなかできることじゃないよなあ。もうひとつの家族、キワの夫、長吉も名言をいくつか残している。「人間、金儲けぐらいが目的で生きちゃいけない」と。他にもでかい家に住む人間が偉いとは限らないと、子供たちに優しく教える場面もいい。
順平の「飲んだからと言って子供の前で出来ぬ話はせぬがよい」というのもいいねぇ。キワが信用を一度失ったら百倍もの真をみせなければ戻らないという一言も突き刺さる。