海の底

mask944211392011-07-03

作者 有川浩 角川文庫。似たようなタイトル「空の中」もこの作者だ。空の次は海なのだ。二つを読み比べるのも一興だ。恋愛度は空の方が多い。
米軍横須賀基地内にある十一番艦きりしおで懲罰の腕立て伏せ200回をやってる実習幹部夏木と冬原が主役。
夏と冬だからねぇ、どうしてもセットで覚えてしまう(笑)
そのきりしおに突然、何かが体当たりしてくる。巨大なエビの集団が人間を襲う。運悪くその日は桜祭で横須賀基地が、市民に開放される日だった。夏冬コンビは艦長と、子供たちをきりしおに避難させようとする。そして最初の悲劇、艦長が腕一本艦内に残し、犠牲となる。13人の子供たちときりしおで助けを待つ夏木、冬原。子供たち一人一人、しっかり書きわけ、コイツ、誰やったかなと読者を後退りさせない巧さは流石だ。ソフトで人当たりがよく,女にモテる冬原と対照的で、口が悪く失言の多い夏木。子供の中に一人だけ女の子がいた。高校生の森生望。夏木と望の何気ない会話が楽しく、最後に夏木を驚かせる望の登場場面をつい繰り返し読んでしまう。
鉄砲や銃なんてまるで歯が立たないのに 自衛隊を出さない日和見主義の官邸。現実を想定して考えると情けなくなる話で、危機管理の本としてもこの本を推奨したいくらいだ。その中で烏丸参事官と明石警部だけが、頼りになる存在。この巨大なエビに弱点はないのか、必死に探る研究所の若者など、脇役一人一人が面白い。そしてかたやきりしおの中では子供たちの勢力図が出来上がっていて、夏冬コンビがなめられつつ、子供たちと絆を深めていく。平時では腕白坊主的な存在の夏冬コンビがこの非常時にどう活躍したか じっくり読んでほしい