命もいらず名もいらず


上下巻、山本兼一、NHK出版。
これもめちゃ、面白いわ。ただし、上巻だけね、ベストにいれるとしたら(笑)
暑い時はもう、小説や、漫画を一気読みするのがいい。あっという間に時間がすぎてゆくから。
山岡鉄舟の生涯を描いた大作である。
本名は小野鉄太郎高歩。後に山岡家に養子に入り、号して山岡鉄舟
この男、どこまでも真っ直ぐなのだ。愚直、心の根が太い。こういう人に政治家になってほしいと思う。
11歳の時、寺の鐘楼の大鐘を見ていて、和尚がからかう。「ほしければその鐘をあげよう」
すぐさま、人を呼んで、鐘をはずさせる鉄太郎。和尚は冗談で言ったが、そんなことしったこっちゃない。父が間に入って、ようやく諦める。
鉄舟の人生に切り離せないのが剣術、禅、書である。ひとつのことをとことん、やりぬくこの男は素晴らしい。なんでも中途半端な自分に自己嫌悪である。
父は徳川家の旗本。武家の子として育つ鉄太郎は剣術が大好き。
この父がまたいいんだな。病床で鉄太郎に「おまえの信じる道を歩め。おまえ自身のためになることをしろ、それが天下の役に立つ」と言い残す。
この鉄太郎に節目節目でいい先達が側にいるのが、とてもいい。
まずは井上清虎。剣術を教えるだけでなく、「人の思う我と、我の思う我は違う」と諭す。心技体ともに成長をしていく鉄太郎。おのれの身をどうやって修めればいいか考え、20の鉄則を書く。嘘をいうべからずに始まる、自分の理想とする生き方を書き綴ったものだ。
そんな鉄太郎も一緒に暮らしている異母兄の鶴次郎に対しては、平常心でいられない。亡き父の後を継いだ兄は、身体を鍛えるでもない。ひがなぼんやりと過ごしている。
19歳で鉄太郎は兄の家をでて、弟たちと家を構える。
そして、次に、山岡紀一郎、号は静山というすごい槍術の人に弟子入りする。
時は黒船が来航し、攘夷論が高まっていく時代である。
鉄舟がどのように明治維新と関わっていったか、江戸を救っていったかが、ここから下巻に書かれていく。
西郷隆盛勝海舟といったビッグネームにどのように関わっていくのか、下巻では期待してほしい。私の中で、鉄舟なんてノーマークだっただけに、この本でいきなり、超重要人物となってしまった(笑)