ふるほん文庫やさんの奇跡


いやぁ、この本に遂に手を出してしまった。というか、まだ読んでなかったんかいと私を蹴とばしたくなる先輩方が、殆どかもしれない。もう表紙からして、間違いなくこれは、気に入るなと思っていたが。そう、表紙はあの池谷伊佐夫さん。書棚の詳細が、表紙にどーんと載っているだけでわくわくする。
特に前半はもう、参考に勉強になりまくりである。この人、今はどうされているんだろう。一度お会いしたいものだ。
日本の偉人シリーズで、この人の自伝も本にすべきだな。そして、図書館においておく。転職20回以上、婚約者に衣食住の注文一切つけないとか、子どもが読んだら、強烈な印象が残るエピソードも満載だが、この本は、古本好きが、文庫好きが避けては通れない。
化粧品のセールスで成功するも、会社を設立して、倒産の憂き目にあい、所持金3000円で名古屋に戻り、パチンコ屋へ就職。もうやることなすこと、強烈なのだ。思いついたら即、実行。口先だけの日本の政治家とは、月とすっぽん。
働きすぎて体調こわし、入院。そこで文庫本を読み出すのだが、新潮文庫の100冊というコピーを見て、よし、入院中に100冊読破してやると決意。それをきっちり、実行するところがもう並の人間ではない。
古本屋で「ここにある文庫が全部うれたら、ビルが建つよ」なんて、言われ、文庫専門の古書店をやることにする。人間、思い込みと継続なのだ。継続は力なり。
誰もが文庫専門なんて無理だよとばかにしていたが、谷口は用意周到に計画を練って、そして、すさまじき努力で開店へとこぎつける。開店準備に6年半をあてることにし、最初の3年は文庫を読む、読む。ひたすら読む。その数や3年で1300冊以上!30分読んで10分休憩するというインターバルを繰り返して読んでいたらしい。
この情熱と集中力。
1日の食費が240円で、あとは文庫の購入に全力を注ぐ。開店までに八重洲ブックセンターを越え、日本一の文庫在庫数を目指していたのだ。なんと11万冊。

次の3年で文庫を徹底的にクリーニングし、開店準備にとりかかる。
文庫のクリーニングの仕方も35頁あたりに詳しく載っていて、谷口氏が使っていた道具がいますぐほしいと思ったぞ。
開店してからも怒涛の生活というか、仕事一色の、文庫一色の谷口氏の日常が綴られていく。
どんな希少なプレミアム文庫も値段は最大1280円までとし、断固、それ以上の値段はつけなかった。成功心とかは人一倍強そうなんだけど、目指すものがお金じゃないんだよね、この人。海外の日本人にも送料を半分負担して文庫を格安で販売したりと、熱くてきれいな心を持っているのだ。
こういう変人が日本の政治家にもでてこないかと切に願う。

明日はやまだひさしさんのサイン会が亀有でありますよ。やまちゃんのファンは是非!

今日の1曲http://www.youtube.com/watch?v=AugdjIk2kbc&feature=related