ポエカフェ堀口大學篇

今日は、なんと夜8時からのあぶくりでの開催。自転車で来る途中、明治通りあたりで、まさかの雨。慌てて、鬼子母神あたりの100円均一ショップで傘を買って、バッグがぬれんようにする。
ポエカフェフードのブルーベリーなどが添えられたチーズケーキとぶどうジュースを頼む。ぶどうジュースはワイングラスに入れてあり、他の参加者から、「ワインでしょ?」と即座につっこまれる・・・だからジュースだってば!
今日は詩人であり、仏文学者であり、翻訳家の堀口大學
自己紹介なしで熱く語りだすぴっぽさん。お、今日はないなとくつろいでいたら、やはりありました(笑)
1892年、時は明治25年東京市本郷区(今の文京区)に生まれた。名前の由来は簡単。親父が東京帝大(いわゆる今ふうに言えば東大でんがな)在学中に生まれたっていうことと、住んでたのが赤門近くだったということで、大學しかない!ってことになったんでしょうね(笑)
3歳のとき、母(24歳)病死。父は外交官。日清戦争開始で父は単身赴任することになり、長岡市へ。祖母に大事に育てられる大學。
6歳で英学を開始というからぼんぼん・・父はベルギーの夫人と再婚。
内藤鳴雪の俳句に心酔し、14歳で俳句を開始。
17歳、家族で上京。谷中墓地を逍遥するのがすきという風変わりな青年(笑)「スバル」で吉井勇の「夏百首」を読み、感激。明星派に魅了される)与謝野鉄幹の「新詩社」に入社。
大学は慶応へ。「三田文学」に詩歌を発表。この頃出会いし、佐藤春夫をは終生の友人となる。学年末の仏語の成績は不可。だが、これで、大學と仏語との関係が終わったわけではなかった。
翌年、二年に進級するも父の赴任地メキシコへ行くため、急いで中退。手続きをちゃんとしなかったため、授業料未納とかになって、退学処分・・ありゃりゃ。
この頃、家庭の通用語が仏語だったので、MKとやらいう、なんとかかんとかさんについて、仏語を習得。上田敏が高踏派と訳したパルナシアン(唯美主義的詩人)などを読む。19歳で翻訳を試みるというから、不可をとった科目でもわからないものである。
21歳でベルギーへ。ランボーを銃で撃ったヴェルレーヌの事件を担当した裁判官の家に住んだこともある。ってどんな人脈やねん!
そんないきさつからだろうか、ヴェルレーヌなど象徴詩への傾倒始まり、詞華集「今日の詩人」でグールモンの詩を読み、精神上の最大の事件ともいうくらいの影響を受ける。
外交官の息子なんであちこち海外をとぶんである、大學君。
スペイン滞在時はなんとマリー・ローランサンとも交流。彼女の元婚約者のギヨーム・アポリネールを教えてもらう。
25歳、外交官試験の為、帰国。筆記はパスするも病弱にて不採用。文学の道へ進もうと決意。
26歳、自費出版で最初の本「昨日の花」(訳詩集)を刊行。序文が永井荷風っていうから、のっけからすごいわぁ。
27歳。この頃、怒涛の執筆ラッシュ。作詞、作歌、評論、エッセイ、随筆、研究、翻訳と多方面に及ぶ。
29歳でなんと今度はパリの書店から「TANKAS」という本を刊行。これが全集には載っていないというから、逆にみてみたい。あぁ、でも仏語なのかしら、そんなん、読めん(笑)
1933年 33歳 第一書房より挿絵入りの豪華本の訳詩集「月下の一群」刊行。66人の詩人たちによる340篇の詩の日本語訳を収めた大部の訳詩集。
アポリネールなど、時代の最先端を行く詩人たちを日本に紹介した画期的な訳詩集で後の詩人たちに多大な影響を与える。上田敏海潮音永井荷風「珊瑚集」とならび三大名訳詩集。
1000ya.isis.ne.jp/0480.html‎ 松岡正剛の千夜千冊も面白いのでどうぞ。
昭和14年、47歳のとき、30歳年下の女性と結婚。
老後は次々と親友らが先になくなっていく。佐藤春夫吉井勇室生犀星らの葬儀に出席。大學は昭和56年急性肺炎にて死去。

300冊以上もの著書を出して、ぴっぽさんがテキストに書ききれんと諦めさせた大學。そんな強者の大學の詩をちょこっとだけご紹介。

「彼等」が短いのだが、含蓄あって面白い。
彼等は知らず、かなしみに
果あることのかなしさを

前半は喜びに果あることのかなしさはしっているとある。
もうこの世の絶望だというくらいのかなしみもいつかは忘れてしまう、そのかなしさをしらないということだろうか。

タイトルだけすごく気になっているのが「夏の日のなまけもの」
恋多き大學がこんな詩をかいておる
「恋のない日」
ここでも果(はて)という言葉が出てくる
訳詩で気に入ったのがローランサンの「鎮静剤」
〜の女よりもっと哀れなのは〜の女ですと締めくくっている。
最後の行は
死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です。

皮肉がきいていて、心地よいのがこれ。最初の2行だけ
「猿芝居」
をかしかつたでせうね
軍閥日本の猿芝居

ま、こんなの戦時中ならもちろん闇に葬られていたでしょうが。

「犀星詩人昇天の日に」抄の最後の3行に大學の気持ちがぎゅっとこめられている

ざまを見ろ ガンの弱むし!
どれほどきさまが暴れても
星一千篇の詩は殺せはしまいが!

「お目あて」も面白い。この人の短い詩が面白くていいんだよな

ー現代詩?
ー小さい!小さい!
僕の狙いは永遠の詩ですよ

最後にこれも気に入ったので。「詩の道」
AからBへ
詩の道は間道です
〜中略
一度っきりの細道です