ポエカフェ 102回目は西尾勝彦篇

102回目の本日の課題詩人は現在もご活躍中の詩人ということでそれだけでうれしくなる、西尾勝彦さんの登場。

1972年京都市中京区生まれ。父は自宅で小さな鉄工所を営む板金、溶接職人。姉と弟に挟まれた長男。
1975年3歳ー京都市伏見区に転居。郊外の豊かな自然に親しむ。
1979年7歳ー京都市立横大路小学校入学。一年生で習う漢字「花」「山」などの形に感動。これ、すごいよねぇ。私は象形文字として漢字をとらえるということがあったかなあ、小さい頃に・・・。

1985年13歳ー京都市立桃陵中学校入学。バスケ部に所属。
1988年16歳ー奈良工業高等専門学校入学。だが誤って入学って!それでも片道1時間半以上かけて5年制の理系学校に通いぬいたとは、凄すぎます。私は理系大の苦手人間だったので、1年もたずに退学していたことでしょう。
西尾さんは何度も留年の危機を迎えながら暗く過ごしたそうな・・・現実逃避に読書に親しむって、よく乗り越えられましたなあ。
1993年21歳ー同志社大学文学部文化学科国文学専攻に編入学
水をえた魚のように文学部が居心地よく、こころよく怠けたそうな。のんびり、ぼんやりすることに親しみはじめる。

1996年24歳ー同志社大学大学院文学研究科入学。将来のことが流石に心配になり、教員免許をとる。この年、結婚。翌年、長女誕生。
1998年26歳ー大阪の巨大な私立校に国語科教員として勤務。昭和時代で止まったかのような下町風情に親しんだ東大阪市のアパート時代。
2000年28歳ー長男誕生。アパート暮らしもそろそろ限界って。そうでしょうね。
2001年29歳ー奈良市鵲街に転居。
2002年30歳ー奈良市紀寺町に転居。休日は近所の奈良公園周辺をお散歩。国語教育に関する実践報告文、論文などを書き始める(2006年まで)

2006年34歳ー奈良市高畑町に転居。この6年で2度の転居ですか。ますく堂みたいだ。もっともますく堂みたいに池袋の雑踏の中の転居ではなく自然豊かな美しい環境に移られてるのがいいですねぇ。
2007年35歳ー美術作家永井宏さんの通信ワークショップに参加し詩を書き始める。毎月3つほどの作品を完成。永井さんのアドバイスは簡潔で適切だったので気持ちよく続く。

2008年36歳ー小詩集「大きな鯨」「手ぶらの人」手作り。大阪のbeyer(バイエル)calo bookshopや京都のガケ書房などで私家版詩集の販売をしてもらえる。ガケさんとかそれだけでもすごい。京都といえば、というくらい有名なお店ですからね。
2009年37歳ー初の個展、朗読会を京都のミズカにて。その後、年に1,2回のペースで奈良のミルツル、東京のリトルコでも個展や朗読会開催。十条のリトルコさんは残念ながら昨年の8月20日で閉店。ブログは今も更新中。またどこかでやってほしいです。http://littleko.exblog.jp/m2017-08-01/
2010年38歳ー詩集「フタを開ける」(書肆山田)刊行。活版印刷でどちらかというと関東風味だそうな。詩集「朝のはじまり」(ブックロア)刊行。こちらは奈良、京都を中心とする関西風味の作品を集めた詩集。この本の表紙が驚きなんだが、雲の絵を一枚ずつ塗装。

2011年39歳ー次男誕生。フリーペーパー「粥彦」の発行を始める。現在25号まで出ていて、これが面白いんですわ、ホー君。
2012年40歳ー詩集「言の森」(ブックロア)旅人と詩人の雑誌「八月の水」の編集を始める(今、4号まで出てるっす)

2014年42歳ーポエトリーカフェin奈良「杉山平一・西尾勝彦」篇開催。西尾さんがゲスト出演。近代伝道師Pippoに出会い、大切な切符をもらった気になる。今回の年譜、一部分を西尾さんが書かれたとのことで、表現が素敵ですよねぇと一人、年譜を読みながら感動していた。奈良の好評をうけ(当然ですっ!)2月22日に東京の古書くしゃまんべにてポエカフェ西尾勝彦篇を開催。詩集「耳の人」(ブックロア)刊行。これがちょっと物語めいていて面白いので西尾ファンでまだの人、如何でしょう。
3月末にはリトルコにて個展、朗読会開催。7月、私家版「のほほんの本」刊行。
2015年43歳ー私家版「耳の人 のつづき」刊行。
2016年44歳ー私家版「さとりの手帖」刊行。三男誕生だぜ。
2017年45歳ー詩集「光ったり 眠ったりしているものたち」(ブックロア)刊行。夏葉社島田氏と尾形亀之助トーク。これ、行かれた方も多いでしょうねぇ。私家版「のほほん自由手帖」刊行。「のほほん社」設立。[いそがしい社会の人びとにのほほんをお届けするために誕生しました。出版を通じてのほほんを広めてゆきたい](設立の弁)
2018年46歳ーそして今日のポエカフェにお土産詩冊子を送付。西尾さん、大変素敵なお土産ありがとうございました!


「言の葉」最初の3行だけでぐいっと心をつかまれる。
大切な人が
言葉を拾っている姿を見かけたら
声をかけないでください

でも だいじょうぶ
時間というおだやかな風が
必ず その一枚を
落としてくれるから

この必ずその一枚をというくだりも好き。この詩にはだいじょうぶという語句が4回でてくる。声をかけないでくださいと最初に禁止の言葉がでてきてどきっとするんだけど
大丈夫やねんと励ましてくれてるかのよう。そして最後の2行
君たちは
だいじょうぶ

詩を書いている人だけを勇気づけてるんじゃない、まわりの君たちも大丈夫やでと励ましてくれている。

「言の葉」とセットで読みたくなるような詩が「待つ」
自分を
待つことが
できるようになった

ようやく
今日できないことは明日
今年できないことは来年
それも無理なら十年後の
自分を待とうと

はるばる
やって来る自分を
待っているんだ

今日やりたくないことをすぐ明日にまわそうとするなまけものの私にはちょっと、え?来年でもいいんだと図に乗りそうな・・・(そうじゃない)
大器晩成という言葉が浮かんだ。これ、待ってるだけじゃなくて力を蓄えながらその時がくるのを待つってことじゃないかとも思った。
できないからといってすぐ諦めるんじゃなくて、そこにたどりつくにはどうすればいいのか、段階を踏んでクリアできたらなと思う。

「ひとりたのしむ」
これを朗読した方が、上に五七五をつけたくなると言われ、ほんまや!と座布団10枚あげそうになりました。
朝の光を
独り楽しむ
とはじまって、ずっと〜独り楽しむとつながるのです。
最後は
今日いちにちを
独り楽しむ
と締めくくられている。

一番気に入ったのは雲と歩いて独り楽しむ。うわっ、雲と歩いたか。のんびりと素敵な時間、空間が思い浮かぶ。雲ってときたま、すんごい速さでおおお、いっちゃったよと思うときが
あるけど、ここのはのんびりふんわり、雲と歩いたんだろうね。

「地べた」コンクリの東京に住んでる私としてはうん、こういうとこに住みたいといいたくなる詩。近所の小学校までグランドがコンクリでがっかりしている今日この頃。
この詩は表現が面白い。
湯気を
しゅううと上げる

しゅうう?想像するだけでちょっと楽しい。
最後の5行がいい。
ぼくは
そのまま
今日を
地べたに
ゆだねることにした

「静かな家族」
きみは言葉を丁寧に選ぶ人だからと4行目にある。自分も言葉を丁寧に選びたいと思う。まだまだ選べていないどころか、言葉を知らない、知らなすぎる自分がいる。

この詩は西尾さんが好きな詩人、天野忠「しずかな夫婦」のオマージュではないかという意見がでた。
「そぼく」最後の2行が心に突き刺してくる

損得では動かなくなりました
わたしはわたしになりました

ちゃんと地べたをみながら私は生きているかいと言われているような。
「意味論」  のほほんとのんびりと癒される詩が多いなか、ちょっと異色な雰囲気を醸し出していた。でもこのての詩も大好物。生きることに意味はないとか、はたまた生きてるだけで意味があるとか、本を読んでいると真逆の主張を目にすることがよくある。一体、どっちやねんと思う時もあるけど、でも生きてるだけでもいいよねと。生きるだけでも大変だから。
詩を読んで、これはこういう意味だと考えることはいい。でも意味につかりすぎても面白くないのかもと思う。

「意味に意味なんてないよ」

言葉の意味なんて
すべて 後付けされたもの

意味づけされないうちに
迅速に動け
意味から逃れる意味は
きっとあるはずだ

「路地」この詩は油断ならない。耳の人?なに、それとわくわくしながら読んでみると不意にどきっとするような言葉がでてくる

世界が一つになって
よいことは一つもない

もし世界中の人が日本語だけをしゃべったら平和になるだろうか。言語が違うのも皮膚の色が違うのも何かがいっしょくたに支配するのを嫌ったためでしょうか。

「ひとり旅のひとり言」

下には
上がいるねえ

僕等の意識が
不自然なんだよ

下には下じゃなく、下には上ときましたか!でもいい言葉かもしれない。すぐに下をみようとする私にとって、自分が一番下なんだから上だけをみてればいいんだと。
ま、下には上がいるよね。そりゃそうだ。僕らの意識がおかしいんだよと言われて本日2回目のどきっ!

私がよんだのは「無意識」(たましい)これは無意識をたましいとよんだ詩人の勝ちです。それだけで。

きみの
無意識が
心臓を
どくんどくんと
動かしている

きみの
無意識は
頭を
あざやかに
裏切っている

この詩の中でもう断トツに裏切っているのとこがいい。参りました。身心一体で過ごせているだろうか。自分の心に素直に生きているだろうか。

前回のくしゃまんべの西尾勝彦篇はこちら→http://d.hatena.ne.jp/mask94421139/20140223/1393135119

さぁ、次回は来月25日K・Tさんが課題詩人です。