書店員タカクラの本と、本屋の日々・・・・ときどき育児

著者高倉美恵。書肆侃侃房。本の本が好きで、見かけるとつい、衝動買いしてしまうが、まだまだ、面白い本はあるのだ。拙者が知らないだけで。いや、でもこの本は読んでおかなきゃ、書店員必読っす。書店員だけでなく、本屋を愛する全ての人にいいと思う。
これを読むと俄然、ブックオカにも行きたくなる。天神の福家書店もみたくなる。
書店員の本というと、リブロにいた今泉氏やジュンク堂の田口氏が有名。だが、これを読んだことで、高倉氏も私の頭の中に即、インプットされた。しかし古本屋の店主のほうが本を多く出しているような気がするなあ。
書店業界の裏話というより、高倉氏が読んだ本の感想が多々でてくる。勤務している書店での風景も描写しているが、大上段にこうあるべきだと決め付けたものいいではない。何より、愚痴になっていないのがいいのだ。ホームページをつくるときにもお客様の悪口は書かないと決めたそうだ。接客業、日々、嫌なことがあり、愚痴の一つも言いたくなるところだが、あくまで前向き。前しか向いていない。かちんとくるお客さんがいたとしよう。高倉氏はこう考えるのだ。
「その人が恥じるほど、スペシャルな接客をすればいい」
ぐうたらで、最低な接客しかできなかった私は、このプラス思考にたどりつくこともなく、同じ失敗を繰り返すという日々だった。なんという差だろう。
「人が変わってくれることを望むより、自分ができることを探さなければ変化はおきない」
まさに私にむけての教訓となる文章だ。
お客様が苦言を呈してくれる。それは氷山のほんの一角なのだ。たとえば書店に行って、嫌な思いをしたら、大半の人はほかの書店へ行くだろう。だからこそ、もっともっと直接悪口を言ってくれと述べる。ブックガイドとして、この本は役立つが、古本屋だろうが書店だろうが、本を売ることに変わりはなく、そういう意味でも大変勉強になる本だ。
本好きなら、自分の巡回地図があるだろう。新刊はここ、古本屋はあそこ。あのジャンルの本がほしいときはあの店など。その優先順位、巡回地図の一番を目指せとある。ほんと、そうだよなあ。ここは一回行ったからいいやと思われたら、まずい。広さ変えることはできないのだから、何をどう選び、どう並べるか。そこを工夫するしかない、いや、そこなんだよ。そこが一番重要だと思う。
本屋に行く理由はざっとふたつにわけられる。為になる本をさがす、つまりは目的買い。もうひとつが、面白い本を求めて。礼状の書き方がわからんから本を買う。これは為になる場合。が難しいのは面白い本。万人に面白い本なんてないでしょう。そう、これって個人的なものだから自分で探すしかない。ブックガイドで、おすすめの本が自分にとって面白いかといったら、意外とハズレもある。どんだけ偉い先生がお勧めしてても、合わないものはあわへん(笑)
それが楽しくなると本屋通いに拍車がかかるんだけどね。
コミックの担当者はコミック以外の関連書も充実させないといけないとか、なるほどなあと思わせるものもある。こういう記述がもっとあると、個人的にはうれしいのだが。書店員の本って、なかなか、日々の業務についての詳しいアドバイス本みたいなものはないんだよねぇ、なんでだろう。私が知らない、読んでないだけなのだろうか。
ラッピングの仕方、のしの書き方とか、書店員の本で教えてもいいと思うのだ。返品や注文の仕方、棚の並べ方とかね。書店によって、取次ぎによって、色々違うことはあるが、共通項もあるはずだ。
この本は5年前に発行されたが、既に、大型書店ばかりどかんどかんと、できていく時代の風潮に疑問を投げかけている。
大きな書店は町にひとつあればいい、あとは小さくても特色のはっきりした本屋が沢山ほしいと。うん、そうだそうだとうなずきながら、ページを進めていく。
あと3つ、ばきゅーんと胸につきささった文を紹介して終わろう。
「売れない、書店が増えすぎている、景気が悪い」と嘆く前に何が本当に売れているのかを素直にみつめたい。
「面白い本屋さんには、一つひとつの本を『どこでもないそこ』にきちんと陳列しようとする人が必ずいる」

読みたいのは誰なのか、誰に読んでほしいのか。買いに来てくれるお客さんに不親切で面白くない陳列をしていないか?と。

文庫や新書を版元別に並べるのって、ちょっと不親切で面白くないと私は思うのだ。
版元別に並べれば、営業にくる版元さん、注文書とにらめっこする、書店員は確かに楽だ。が、タイトルしかわからん、作家しかしらなくて、本を探しにくるお客さんの如何に多いことか。作家も版元もちゃんと調べてくるお客さんは、そりゃ、活字中毒といってもいいくらい、立派でわずかなのだ(笑)私もどちらかというと、好きな作家で探すタイプだから、せめて作家別にまとめてほしいと思う。