ポエカフェー小熊秀雄篇 

池袋モンパルナスの小熊秀雄である。初参加の人が5人位、いらっしゃったかな。いつもにもまして、フレッシュな顔ぶれが加わってのポエカフェなのだ。
そして今回から、スタンプカードが登場したのだ。わくわく。しかし、このスタンプ、詩人の顔たちがもうリアルで、スタンプを押すのさえも勿体無い。(笑)
私にしては初である。ポエカフェに備えて、図書館で本を借りるなんて!しかも重いのに8冊くらい借りたのに。なぜか、開架式は評論っぽいのばかりだった。
でも1冊くらいしか読んでません。ちょうど、借りた翌日くらいにブックオフへ行こうとゲオの前を通ったのが間違いのもと。レンタル50円でつい、ふらふらと・・・なにしてんでしょうね。
1901年(明治34年)生まれなのだが、このおにいちゃん、ちょっと出生がはっきりしない。生まれた年も1901年じゃなさそうと書いてあるものもあるし、しかも私生児。小樽で生まれたのだが、親父たちがイカン。父は三木清次郎、母は小熊マツ。20歳の時、徴兵検査で自分が母マツの私生児であることを知った秀雄は、以後、小熊姓を名乗る。もしかしたら三木秀雄だったかもしれない。
秀雄は小さい頃から自力で何とかするしかない人生を歩いていた。
15歳にして、労働者だ。養鶏場やら炭焼き、農業の手伝い、パルプ工場など、様々な仕事をこなす。パルプ工場で右手の人差し指と中指を機械に挟まれ失う。
小熊は字は右利きだったのだろうか。この2本なしで画も描いていたのだろうか。
22歳の時、ダダに傾倒。この頃、使っていたペンネームがおどろおどろしい(笑)
「悪魔詩社 小熊愁吉(醜吉)」
23歳のとき、友人の高橋北修と初上京。詩を売り歩くがひとつも売れず、旭川へ戻る。
24歳、運命の相手現る。その名は崎本つね子。小熊の絵を見ていて、ナンパされ、そのままゴールイン。このつね子も結婚してから、かなり辛苦を味わう。近代詩人とくればおきまりのキーワードが「貧乏」
小熊夫婦は長崎町周辺で家を借りるも5ヶ月ごとに追い出される。家賃を滞納していて、5ヶ月ぐらいが限度らしい。私が読んだ本では、小熊らに大家さんが引越し料をだしてまで、追い出したらしい。
妊娠したときも身内に身重なのに働けと言われたり、彼らの長男焔君が、入院したときのエピソードがこれまた恐ろしい。治療費を払えないので、医者が「この子は長生きできん」みたいな捨て台詞を言ったらしい。あぁ、世の中、金だよ、金なのかよ。
金はない、自分も喘息に苦しむ。でも小熊は創作活動をがむしゃらにした。プロレタリア詩人会に入ったりと意気盛んなのだ。
ポエカフェでなんで詩人がモテるのかという議論勃発。小熊もツネ子がいながら、秘書を一緒に住まわせたりと女性関係は派手だった。
あんな頭なのにモテたんだね・・・。どうみてもあの頭は爆発してまっせ。
詩人はどいつもこいつも貧乏なのに!皆さん、詩人には気をつけましょう(笑)
お金があったら詩人をやってないというごくまっとうな意見も出ていました。
お金はないし、ろくなやついませんよ、小熊といい、啄木といい・・・(笑)
詩を書く、絵を描くというだけで、もうイチコロなのかもしれませんなあ・・・
小林多喜二が32歳の時、獄死。この年に2回目の逮捕される。ロシアの舌がもつれそうな詩人(マヤコフスキー)、プーシキンゴーゴリに傾倒。
39歳の若さで結核のため死亡した小熊。詩人であり、童話作家であり、画家であった小熊。
彼の詩は長いものが多いので、引用は短めで(笑)
「マヤコオフスキーの舌にかわって」
マヤコオフスキーに傾倒していた小熊。だが、このロシアの革命詩人は恋愛挫折により、拳銃自殺。
君のような自殺はできない。と語り、次の一文がいい。

死よりも、生きる責任の強さのために、
よし、たといその生が死よりも惨めなものであってもー。

セットでおすすめしたいのがこの二つ。ぴっぽさんの合わせ技に座布団3枚である。
小熊の「最初の微笑と最初の手」を読んで室生犀星の「永久の友」を思い出したらしい。
小熊のは長ったらしくて、それに比べると犀星のはコンパクトにまとまっていて、対照的なんだけど、二つの朗読を聴き終わってみると、
うん、どこかしら似ているような気がしてくるから不思議だ。
これだと思える相手に初めて会った時の素直な心が似ているのかもしれない。

文壇風刺詩なんてものをこのおにいさんは書いていて、うん、これは確かに面白かった。
これはもっと読みたいので、図書館とかで探してみよう。
ポエカフェで小熊秀雄の片道切符として、槍玉にあがったのが谷崎潤一郎室生犀星佐藤春夫。啄木もあるのかなあ。あと中野重治もありそうだな。
谷崎潤一郎へ」とまるでお手紙のような書き方ではあるが

先生の御作は そやさかいに ほんまに しんどいわ
とラストを締めていて、もう、笑えるわ。これ、関西弁にしたというだけでも傑作でんがな。

「弱い愛に負けてゐる」の最後がこれまたいい。

私の強い愛が、あなたの弱い愛に負けてゐる

しびれますねぇ。強きものが弱きものに負ける。

小熊秀雄といえば、「しゃべり捲くれ」なのだ。私はしゃべりまくれる人が羨ましい。病にも言論弾圧にも負けずに、しゃべりまくり、書きまくった小熊秀雄
言葉の自由は私のものだと他の詩でも言ってる小熊。私は3分しゃべれといわれただけでも頭が真っ白で、いつもポエカフェの自己紹介も10秒がいいとこだ。
ちなみに今回の自己紹介コーナーは20人で何故か、1時間もかかってしまい、駆け足で小熊秀雄の年譜を追いかけていくこととなった。