今日は再び来らず
城山三郎 講談社文庫
この題がいい。二度とないからこそ全力で悔いのないようにやらねばならぬ。
受験戦争を扱った小説なのだが、今、読んでもちっとも色あせしない。この文庫が出たのは昭和56年とあるのにもだ。
主役は塾の先生たちである。銀行に不採用になって親友、福原のすすめで塾をやることにした津島。すすめた福原の言葉が面白い。
「塾をやれ。どんな時代でも本屋と花屋と塾だけは強い」と言うのだ。っかと思うとしばらく読んでいると、いくら業界が上昇気流に乗っていても評論家みたいなことばかり言ってると潰れるぞと津島を戒めるとこがあって、もう前言撤回かよ(笑)
福原と津島は性格が光と影のように対照的。塾のやり方も対照的だ。
福原も塾をやるのだが、行動が素早く市場調査をして、あれをしてこれをしてと、個人で店を開業する人にも参考になりそうなノウハウを持っていて、このあたりはビジネスマン向きでもある。この本は塾の経営者は必読だよ(笑)講談社文庫の「し」のとこに置くより、ビジネス書のあたりに置くのも面白いだろうな。
塾生ではひたすら東大だけめざし、大蔵省に入り、最終的に総理大臣を目指すという子供が登場する。今、将来の夢は総理大臣という子供はいるだろうか。日本の総理大臣に憧れをもつことができるだろうか。
津島は田町予備校にスカウトされ、そこでの講師になる。塾の経営と二刀流である。スパルタ式教育をやったり、常に時代のニーズに答えようとする、いや先をいこうとする福原が、学校教育の不幸は学校の先生を選べないことだという。この人の言葉にたまにどきっとさせられる。田町の次に津島は湯島セミナーで教えるのだが、ここの各教室の壁に
「今日は来らず」と「渾身の指導」と貼ってあるのだ。
「落日燃ゆ」も面白かったが、これもあたりだな。城山三郎いいぞ。
池袋西武のキットカット専門店は世界初ということで、いつみても(といっても朝が多いけど)行列だなあ。もうちょっとスペース広くすればいいのに、あんな行列じゃ、何があるか覗く気にもならん(おい)