ぽえかふぇ2回じゃ終われない犀星篇


犀星の続編。いがらし氏に続いて、また今回も強力なゲストいらひ氏をお迎えしてのポエカフェ。なんとこのお方、女子大生・・・卒論は無論、室生犀星ということで、是非とも卒論は見せて頂きたい。
遅刻したので、わたくし、前半はカットします。聞いてませんので(笑)
ほぼ20時になろうかという頃にやっと到着。犀星は30歳以降、もてはじめるなんて言葉からスタートしました(笑)
今日もぴっぽさんの濃厚な資料を頂き、とりあえずコーヒーで落ち着こうとしていたら、すぐにあの片道切符があたってしまう。3番の人といわれ、え?もう?と思いながら、朗読。
犀星が29歳の頃から、ぴっぽさんといらひ氏の息のあった説明を拝聴。後で聞いたとこによると、このお二人、リハーサルなしの一発勝負だったらしい。以心伝心とはこういうことをいうんですね。
1919年犀星30歳にして小説家デビュー。詩では稼げないと小説を書き始める。今も昔も詩はマイナで深く、小説は間口が広く、大衆的である。
佐藤春夫の「田園」を熟読して小説の勉強をしたというから犀星はえらい!
編集者に原稿だけでなく手紙もそえて送ったという。一度送って、音沙汰がないので、次の手紙には「お忙しくて読むひまがないでしょうから、自費出版したいと思う」と原稿の返送を要請した犀星。ここまで言われて読まなかったら・・・読んでて良かったよ。
デビューしていきなり三部作書いたりと、犀星は小説をばりばり書きまくるのだ。
34歳ごろまで小説を乱発。あの親友のおぼっちゃん、朔ちゃんこと朔太郎に「お前は詩人だろ!」とキレられるぐらいに。犀星、お金のために書き始めた小説だけど、書き始めると、かっぱえびせんのようにとまらなかったのだろうか。(私はキャラメルコーンのほうがとまらない)あら、とまんねぇやといくらでもアイデアが湧いてきたのかも。
この小説濫作時代の33歳の時、息子豹太郎がわずか1歳で死亡。それから書いたのが「忘春詩集」この中の「あきらめのない心」が胸を打つ。
子が死んだら忘れなさいと仏教の教えにはあるが、そう簡単に忘れられるかとやりきれない心情を歌っている。そして無理に忘れようとするのはおろかと歌う。
最後の2行が特にいい。
あきらめられずある心よ
永くとどまれ

翌年の1923年も激動なのだ。長女の朝子が生まれて数日後に関東大震災
金沢に移る。
37歳の頃、プロレタリアの詩人たちと交流。中野重治堀辰雄窪川鶴次郎らの同人雑誌「驢馬」を熱く応援。次男、朝巳が誕生。
翌年、尊敬し、深く親交のあった芥川龍之介が自殺。
犀星はショックで田端から大森へ移住。45歳のとき、詩と決別。事実をありのままに書こうと。彼の思想に大きな変化が現れる。でも犀星の魂はずっと詩人のままであった。
それから60歳後半の犀星がもうすごいの一言。30代の濫作時代と違って、名作、代表作を連発。同じ60代でも失言を繰り返すどこぞの島国の政治家たちと大違い(笑)
開幕のあのカープの6連勝みたいなものです。(あぁ、一瞬でしたね・・・)

「愛の詩集」掲載の「夕の歌」犀星29歳の時です。
二行目に温良な祈りとある。一行目で「寂しい夕を迎へた」とあるのにだ。
寂しさを抱きつつ、どこかやさしい、温かい雰囲気をもまとっているような気がする。
だが、中盤からまた闇の中を歩いているような気分にさせられるフレーズが出てくる。
悲哀(かなしみ)は悲哀のままの姿で
またあすへめぐりゆくのであろうか

そして最後の行が「深い思索に沈んでゐた」で結んでいる
ぼんやり生きるなよとも言われているような(笑)

ぴっぽさんも絶賛していたのがこの一行
「雨の詩」より
雨は愛のやうなものだ

この比喩のすばらしさ。犀星の言葉選びの感性がすごい。
愛は雨じゃない。雨が愛と例えるとこが普通じゃない。

「第二の故郷」で気に入ったのがこの1行
東京がだんだん私をそのころから抱きしめてくれた
私も第3の故郷がそうなるといいなあ。この詩にミスチルの「東京」をBGMに捧げよう。
室生犀星氏」というなんともすごいタイトルの詩もある。
自叙伝は巷に多くあれど、自分の詩の題に自分の名前をつけて、しかも氏ですよ(笑)室生犀星はこんな人間ですという詩にしても面白いと思うが、この詩は、世間から認められない悔しさを自嘲的に綴る。
ナルシストの詩というより、自嘲気味だね。「脳はくさりて」なんてナルシストは言わない。

世界の山ちゃん」でそのままポエカフェ有志と飲み会へ。飲み会ではいらひ氏の犀星資料を頂く。これがまた大学のシナプスっぽくて、すごいわ。是非ともポエカフェで犀星論文発表会をやって頂かなくては。
全作を読んだわけじゃないので、今後、順位が変わるかもしれませんが
今のとこ、私の犀星ベスト1位小説は「杏っ子」です。もう、これが父と娘のあの仲のよさが面白い。娘も息子もろくなのと結婚しないんだわ(笑)そんな子供たちを見守る犀星がというかこの父親がいいんだよね。これ、どこまでがホントの話なんだろうともう、興味津々で読み進めていた。次はどれ読もうかな。そして今回もでた、犀星の愛人ネタ。動物にも人にも家族にも優しい犀星ということで締めたいと思います(おい)